昔、こんな話をきいた。 「都会の人は住まいを、都会の便利さにものを言わせて、材木だの瓦だのとあちこちから材料を買い集めて、自分たちの都合いいように建てる。だが、田舎に住む者にとって、家はそう簡単に思う材料で好みのままに建てるわけにはいかない。田舎の家は、その土地で最も得やすい材料を生かして、その土地の風土に合ったような形に建てるのだ。だから寒い地方は寒さを防げるように、台風の多い地方では雨風に備えるような家のかたちにと、自然特徴が生まれてくるのだ」と 。私たちが旅先で思わず美しいと思わせられるその地方特有の形をした民家には、その土地の人たちが長い間自然と対峙し共存してきた経験と工夫がこめられているのだ。その時間の厚みや努力が、私たち見るものに感動を与えてくれるのだろう。

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